乃南 アサ 祝辞。 夜離(よが)れ (新潮文庫)

乃南アサ

乃南 アサ 祝辞

40代男、普段はめったに文芸作品を読みません。 某所で書評を読んだのが乃南アサを 知り本書を手に取った経緯です。 短編6作すべて良かったです。 共通しているのは終盤まで緩やかに進んでいって最後の 最後に訪れる急展開。 テーマは人間(この作品では女性ばかり)の狂気・多面性・怖さ です。 普段演じている「自分」と潜んでいる「自分」がふとしたきっかけで 切り替わる怖さ。 特に普段おとなしくまじめな人が牙を剥く展開はぞっとします。 私の周りにもこんな事件が起きそうで、または自分も起こしそうで恐ろしいです。 とりあえず1編でもいいので乃南アサさんの作品を読んでみることをおすすめします。 私はハマってしまったので短編を中心に他の作品も読む予定です。 一つ注意なのははっきり言って後味が良くない話も多いのでそういうのが嫌な人は お気をつけください。 ラストが秀逸。 全体的に怖い。 『夜離れ』はそうでもないけど。 最後の『夜離れ』が特に印象に残ります。 ちょっとバッドエンドっぽくもあるんですけど、立ち直り方が良いんですよね。 この主人公の比佐子さん、いくつもの恋愛を経験しているから、最後の真面目風の男のことなんてちょろいと思っているようだけど、 その恋愛経験が裏目に出ている感じもあり、本当の自分を表現できない不器用な感じもあり、何か応援したくなる性格です。 彼女が恋愛に目的意識を持ったり、過程を楽しんでいく姿が面白いです。 女子大は出たけれど就職難で就職先も決まらず、腰掛かけ程度の軽い 気持ちで始めたホステス業。 のめりこんでしまったが、平凡な幸せを 望み、平凡なOLに戻った。 そしてある男性と出会うが・・・。 表題作を含む6編を収録。 同性の私が言うのもおかしいが、この作品を読んでつくづく女性は 怖いと思った。 笑顔の中に潜むねたみや憎悪、そして残酷なまでの 冷淡さ。 特に「髪」という作品は印象に残った。 自分より劣っていると 思う人間に対しては寛大な気持ちになれるが、立場が逆になると・・・。 怖い! この作品に出てくる女性たちは、平凡な幸せを求めていたはずでは なかったのか?それが、どこでどう狂ってしまったのか?そう考えると 哀れさも感じる。 女性の心理を見事に描ききった作品だと思う。

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【朗読】祝辞 ‐ 乃南アサ <河村シゲル Bun

乃南 アサ 祝辞

六人の実力派女性作家のイヤミスアンソロジー。 深淵を覗き込めば、深淵もまたお前をみている(ゲーテ)の言葉を思い出す。 既読のものもあったが、結末を覚えていない(いい本の読み方をしていると本気で褒められたことがある)ので、ドキドキして読んだ。 辻村深月『鍵のない夢を見る』初出、「石蕗南地区の放火」。 笙子は「いい人いないの?」と聞かれるお年頃。 自意識が加速していくのは男も女も同じで、実はあまり年齢に関係ないが、面倒なのは、色々見えてきてしまうこと。 勢いで行けないのだ。 とは言え、デートくらいはするもので、お試しにと渋々会った相手は......。 大林は、もう、何と言うか、「断られてんの、気付けよ!」「あーダメだ。 ありえない」な相手。 だからこそ、の後味の悪さ。 沼田まほかる「エトワール」、乃南アサ「祝辞」 この二編はどちらもレディースコミック的な題材を扱う。 不倫だの、女同士の友情だの、ドロドロの中にどうミステリーを潜り込ませてくるか。 祝辞は、どんでん返し、ではないが、たまにこうした濁りを啜りたくなる。 エトワールは、昔部活でした練習劇を思い出した。 内容は全く違うが、紐に絡めとられる恐怖を思い出した。 6人の女性作家による後味の悪い短編作品集。 辻村深月「石蕗南地区の放火」女性の心情の内にある後味の悪さ、、哀れな感じ 小池真理子「贅肉」姉妹の行く末、人を呪わば穴二つ。 沼田まほかる「エトワール」 新津きよみ「実家」これも思い込み自らを追い込む女性の心情 乃南アサ「祝辞」よくあるパターンではあるものの、途中が不気味でした。 宮部みゆき「おたすけぶち」既読で覚えてたのですが、やっぱり宮部みゆきさんは怖い話を書くな、、と。 イヤミス、、、どの作品にも自分の心の中にある負の部分に気づいたりして嫌な気持ちになるのでしょうか? 小説で読むだけでおさめたいものです。 あとがきに、後味の悪い作品で胸やけした読者にハートフルミステリー傑作選が紹介されてましたので、今度はそちらを読んでみます。 宮部 みゆき(みやべ みゆき) 1960年、東京都生まれ。 1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。 1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。 大沢オフィス所属。 日本推理作家協会会員。 日本SF作家クラブ会員。 直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。 『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。 2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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夜離れ(乃南アサ) : 新潮文庫

乃南 アサ 祝辞

実際ミステリー系の長篇だけでも一〇を下らぬ新人賞が存在する。 何故こんなに新人賞が多いのかといえば、業界は常に力のある新人を求めているということなのだろう。 そうはいっても経費はかかる。 その初体験は一九八八年から七回続いた日本推理サスペンス大賞で、記念すべき第一回の大賞受賞者は残念ながら出なかったけど、優秀作をゲットしてプロデビューしたのが乃南アサだった(作品は『』)。 実は下読みで最初に『幸福な朝食』をチェックして候補のひとつに残したのは筆者であったが、こちらもまだ新米、これが授賞に値するのかどうか、はっきりいってよくわからなかった。 内容は、女優に挫折して人形使いになったヒロインをめぐるサイコ系のサスペンスで、のちの乃南作品を髣髴させるような作風。 もっともこれは、乃南さんにとっても初めて書く小説で、「推理サスペンス」という意味もよくわかっていなくて、取りあえずを片っ端から読んで勉強したうえで執筆に臨んだらしい。 随所に粗っぽさを指摘されても、才能を評価されたのだから、やっぱり只者ではなかったということで、それはその後の軌跡を見ても一目瞭然だろう。 デビュー当時、推理サスペンスの意味もよくわかっていなかったという新人が、推理サスペンスを中心に作品を重ねていくにつれてワザに磨きがかかり、ついには『』で直木賞を取るまでに至る。 まさに小説家の典型的なサクセスストーリーというべきか。 もちろんその間、苦労がなかったわけではないだろう。 アイデアがなかなか浮かばなかったり、筆が進まず胃を痛めたこともあったに違いない。 デビューしてすでに四半世紀以上がたつが、そうした山あり谷ありの軌跡をうかがわせるのが本書から始まる『乃南アサ短編傑作選』である。 デビュー作『幸福な朝食』直系の推理サスペンスものを中心に編まれているといったらおわかりいただけようか。 それでもピンとこなければ、取りあえず冒頭の「くらわんか」をお試しあれ。 舞台は大阪で、元キャバ嬢の季莉が東京の店にいたときの上客、ぷぅさんこと風間と再会するところから始まる。 季莉はミュージシャンの卵である男を追いかけて大阪にきたというが、関係は程なく破局。 かつてセフレだったぷぅさんとの仲が復活する。 焼けぼっくいに火が付くというやつで、ぷぅさんが妻帯者であっても、ふたりの関係は順調に運ぶかに見えたが……。 そう、一見どこにでもありそうな日常の描写が突如反転するのが本書の特徴なのだ。 その反転の切れ味が推理サスペンスの生命線、続く「祝辞」からどんな趣向が凝らされているか、どうかご自分の目でお確かめいただきたい。 いや、だからといって、全部が全部、怖い結末が待っているというわけではありません。 中には、そうかそんな手でくるのかと思わずニヤリとしてしまうものも混ざっている。 著者はあの手この手で読者を翻弄しにかかってくることを、ゆめゆめお忘れなきように。 ちなみに、この『短編傑作選』、今後もテーマ別に巻を重ねていく予定とのこと。 続編もどうぞお楽しみに。 (かやま・ふみろう コラムニスト) 1960(昭和35)年、東京生れ。 早稲田大学中退後、広告代理店勤務などを経て、作家活動に入る。 1988年『幸福な朝食』が日本推理サスペンス大賞優秀作になる。 1996(平成8)年『凍える牙』で直木賞を、2011年『地のはてから』で中央公論文芸賞を、2016年『水曜日の凱歌』で芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。 他に『ボクの町』『団欒』『風紋』『晩鐘』『鎖』『嗤う闇』『しゃぼん玉』『ウツボカズラの夢』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ニサッタ、ニサッタ』『犯意』(共著)『六月の雪』、エッセイ集『いのちの王国』『ミャンマー』『地球の穴場』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『犬棒日記』など著書多数。 巧みな人物造形、心理描写が高く評価されている。

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